2015-06-09
by Yla

A Winged Victory for the Sullen 美しい夢のために(後編)

 

「この世でもっとも美しいアンビエント」と高い評価を得た1stアルバムから3年、
A Winged Victory for the Sullenが去年、2ndアルバム「Atomos」を発表した。
で、これがまたすごく良くて、
1枚目に引き続き、ここんところの僕の睡眠導入愛聴盤となっている。

 

1stアルバムにはそれぞれの曲に、ちょっと長めのまるで詩のようなタイトルがつけられていたけれど、
今回はずいぶんと素っ気なく”Atomos I”から”Atomos XII”の全11曲。
(なぜか4がない、ボツになったの?)

 

と言うのも、このアルバム、英国ロイヤルバレエの専任振付師であり、
ダンス・カンパニーRandom Danceを主宰する
ウェイン·マクレガーによる
モダン・ダンス作品「Atomos」のために作られた楽曲とのこと。
このダンス作品に強くインスパイアされたダスティンとアダムは、
ブリュッセル、ベルリン、レイキャビクで、
2013年の夏の4ヶ月間でレコーディングを敢行(1stは2年がかりだった)、
その仕上がりから、依頼されたダンス音楽としてだけではなく、
自らの2ndアルバムとして位置づけ発表した、ということらしい。

 

さてそのせいか、この「Atomos」は前作といくぶんニュアンスを異にしている気がする。
よりクラシカルな重厚さが増していて、アンビエント、ドローンというより、
モダン・クラシカルな要素の方が強くなったかな、という感じ。
しかし、チェロ、ビオラ、ヴァイオリン等の流麗で重厚なストリングスと、
オルガン、モジュラー・シンセ等によって生み出される深くたゆとうサウンドの合間に、
時折ダスティンによるシンプルでありながら美しく切ないピアノの旋律が現れて消える様は、
やはり彼等ならではの音世界だと唸ってしまう。
そして、ただただ、うっとりと聴き入ってしまうのだった。

 

Atomos VI

 

ところで、この音楽を依頼したウェイン·マクレガー(Wayne McGregor)なる人、
僕はそっち方面にあまり詳しくないので、ちーとも知らなかったが、なにやらスゴそうな人らしい。
イギリス、ロイヤルバレエ団の常任振付師で、大英帝国勲章を受勲したりとばりばりアカデミックながら、
ポップ・ミュージックのフィールドとも関連が深いらしく、
レディオヘッドの「Lotus Flower」のPVでトム・ヨークの振り付けをしたことでも有名。
あ、これ知ってる。
いきなり変な動き始めて、どうしちゃったの?トム・ヨーク大丈夫?
と、けっこうインパクト強かったもん。

 

Radiohead – Lotus Flower

 

それより驚いたのは、彼はいわゆるアンビエント系のミュージシャンとコラボレーションする事も多く、
自身の主宰するRandom Danceの作品の為に書かれたスコアからはこれまで、
マックス・リヒターの「Infra」、オーラヴル・アルナルズの「Dyad 1909」等が生まれているという!
なにソレ?好きなのばかりじゃん。
恐るべしウェイン·マクレガー、、、、。

 

と、なるとぜひとも、このダンス作品「Atomos」も見てみたい、と思って探してみると…、
ありました。
短縮ダイジェスト版ながら、上がっていました。
かっこいーです。美しーです。ゼヒ、全編を見てみたいものです。

 

Wayne McGregor / Random Dance – Atomos

 

さて、最後の方はすっかり話がそれてしまったが…

 

という訳で、皆さんも今晩あたりA Winged Victory for the Sullenを、
睡眠導入音楽として試してみては、いかがでしょうか?
きっと、世にも美しい夢がみれるかも、ですよ。

 

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