2015-06-08
by Yla

A Winged Victory for the Sullen 美しい夢のために(前篇)

 A Winged Victory for the Sullen Facebookより

 

寝る時にはいつもカナルタイプのヘッドフォンを耳に差し込み
音楽を聞きながら眠りにつくことにしている。
わりあい寝付きの良い方なので、たいていは1曲めの途中か
遅くても2曲めを聴いたあたりですっかり夢の中だ。

 

そんな睡眠導入音楽として選ぶのはいつも、
当然ながらビートがはっきりしてるものや、ハデでノリノリな音楽ではなく
安らかに眠りを誘う音楽…、
つまり、アンビエント、ドローン、モダン・クラシカルあたりからの選曲となる。
ま、僕の場合、普段でもこのあたりの音楽ばかり聴いてるんですけどね。

 

さて、ここ数年でこの睡眠導入音楽として一番聴いているのはなんだろうと考えた時、
すぐに思い当たるのが「A Winged Victory for the Sullen」だ。
ア・ウイングド・ヴィクトリー・フォー・ザ・サレン、
直訳すると「不機嫌のためのニケ(ギリシャ神話の翼の生えた勝利の女神)」?。

 

 

淡青のバックに裸の物憂い女性が線画で描かれた美しいジャケットデザイン
これに惹かれて何の予備知識もないまま聴いたのが、たしか3,4年前のこと。
それが2011年に発表された彼等の1stアルバムだった。
このアルバムに関してはどこかのサイトで
「もっとも美しいアンビエントミュージック」みたいな紹介文があったと思うのだが、
いやほんと、じつにその通り。
その美しいクラシカル・アンビエントな音世界にうっとりと聴きいってしまった。

 

あまりにも抽象的なだけのアンビエントやドローンミュージックは、
最初は気持ちよくていいんだけど、
そのうち退屈になり、後になったら何も残らなかったりする。
あまりにもキレイなだけの音楽は、最初はいいんだけど、
だんだんそのキレイキレイさが鼻についたりする。
そんな僕にとって、彼等の「沈みこみ感」と「美しさ」が絶妙なバランスにブレンドされた音楽は、
まさしく、どんぴしゃりのツボだったのだ。

 

さて、どんな人達なの?と調べてみると… 、
ダスティン・オハロランと、スターズ・オブ・リッドのアダム・ウィルツィー、
この二人のプロジェクトだと分かってびっくりした。
両者ともにお気に入りで、よく愛聴していたアーティストだったからだ。

 

ダスティン・オハロラン(Dustin O’Halloran)はロスアンジェルス生まれ、
現在はベルリンを拠点に活動するモダン・クラシカル系の作曲家、ピアニスト。
一般的にはソフィア・コッポラ作品「マリー・アントワネット」の
ニューウェーブ趣味爆発のサントラの中に、
一服の清涼剤のようなピアノ作品を数曲提供したことで有名。
最近はサントラ作品が多いけど、僕は2011年に発表した「Lumiere」がお気に入りで、
これも睡眠導入音楽としてよくお世話になっている。

 

かたやスターズ・オブ・リッド(Stars of the Lid)。
アダム・ウィルツィー(Adam Wiltzie)とブライアン・マクブライド(Brian McBride)による
テキサスで結成されたアンビエント、ドローン・ミュージックの二人組。
前述の理由で僕はドローン系の音楽はそれほど意図してはあまり聴かないのだけど彼等は別。
ストリングスやホーンも溶け込んだモダン・クラシカル感漂う美しいドローン。
2007年に発表された2枚組120分の名盤
「Stars of the Lid And Their Refinement Of The Decline」はよく聴いたけど、
それ以後、スターズ・オブ・リッドとしては作品を発表していないようだ。
もう、やらないのかな。

 

 

さて、このダスティン・オハロランと、アダム・ウィルツィー(スターズ・オブ・リッド)が
組み合わさったA Winged Victory for the Sullen。
なるほど、言われてみれば、まさにこのアーティストたちの組み合わせによって生まれた音楽だ。
美しく沈み込むドローンアンビエントに、これまた美しいピアノの旋律。
それらがたんに組み合わさっただけではなく、融け合って素晴らしい相乗効果を生み出している。

 

あ、彼等の2ndアルバム「Atomos」についても書こうと思ったけど、長くなってしまった。
続きは次回。

 

とりあえず1stアルバムより「A Requiem for the Static King Part One」の
オフィシャル・ミニムービーを貼っておきます。

 

A Requiem for the Static King Part One “The Butterflies”

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