2011-01-15
by Yla

雪の総持寺

 

石川県への帰省(妻方)の際に、ちょっと楽しみにいているのが古寺名刹めぐりだ。
開祖の道元と並んで曹洞宗宗祖として崇められる第四世瑩山禅師ゆかりの寺が能登にはいくつかある。
金沢の大乗寺、羽咋の永光寺、輪島の総持寺祖院などだ。
縁があってこれまでに、これらの古寺を訪ねることができたのだが
いずれも趣きのあるいい寺ばかりである。

 

瑩山禅師という人は、何より修行一筋でストイックになりがちな道元の教えを、
より一般に向けて門戸を開き、曹洞宗のすそ野を広げた人とも言えそうで、
言ってみれば曹洞宗エバンジェリストといったところか。
いずれにせよ、今日の曹洞宗になくてはならない大きな足跡を残した人物だ。
越前(現在の福井県)に生まれた瑩山は、幼い頃より信心深い少年だったらしく、
8歳の若さ(というか子供じゃん)で、道元が開いた本山永平寺に入山。
よく学び、得度。師である義介に従って大乗寺に移り、その後大乗寺2世となる。
羽咋に永光寺(ようこうじ)を開山。
そして能登に、後に永平寺と並んで曹洞宗大本山となる総持寺を開山する。
晩年は永光寺にもどり入滅した。

 

ちなみに総持寺は、明治時代の火災による消失を機に、横浜の鶴見に移転した。
よって、現在の能登総持寺は、鶴見の大本山に対して、総持寺祖院と呼ばれるようになる。

 

さて、前置きが長くなってしまったが、今回も寺社巡りをする機会を得たので、
それではと、もう一度総持寺を訪れてみることにした。
折から前夜降った少しまとまった雪で、総持寺は真っ白に染まっている。
小降りながらも雪は降り続いていた。
前にこの寺を訪れたのは、8年前の夏のことだ。
汗をふきふき蝉の声を浴びながら見てまわった時とは当然ながら、全く印象が違って見えるものだ。

 

しかし、ワビサビ感あふれる禅寺のたたずまいには雪景色がとても似合う気がする。
雪によって余分な色味が削ぎ落とされたモノクロームの世界。
そのシンプルでイノセントな空間に身を置いていると、だんだんと心がしんとしてくるのが分かる。

 

「雪景色がいいですね」とお寺の方に声をかけると
「たまに見えられる方には、そうでしょうね」とやんわりと言われ、ちょっとチクリとする。
そうだよなぁー、ここの人たちは、
この身を切るような寒さの中で、毎日毎日、厳しい修行をしてるんだよな、、、、
いやー、頭が下がります。

 

ところで、残念ながらそれにも増して印象的だったことが、もうひとつ。
建物のそこかしこに、地震の傷跡がいまだ生々しく残っていたことだ。
4年前に襲った能登半島地震では、この総持寺が建つ輪島市門前町あたりが一番の被害を受けたらしい。
見ていて痛々しい傷跡が、その被害の規模を彷彿とさせる。

 

特に中央の大祖堂(法堂)は、まだ修復中のため立ち入り禁止で、
完全修復までは、あと数年かかるらしいとのこと。
こういう古い建物の修復というのは、単純になんでもかんでも新しく作り直す訳にもいかず、
むつかしい作業であろうと想像される。
色々と大変でしょうが、一日も早い復旧を願うばかりである、ほんとうに。

 

ちなみにチョー微力ながら、わがイラテックも瓦一枚分寄進させていただいた。
がんばれ、総持寺!と祈るばかりである。

 

能登 総持寺

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