2009-09-19
by Yla

イラテックタマテックイラテック

むかしむかし、、、
僕がまだイラストとかマンガとか仕事を本格的に始めるちょっと前、
つまり「奥平イラ(ペンネーム)」になる前のこと、
当時仲良く遊んでいた友人と一緒に、多摩テックにゴーカートに乗りにいったことがある。

 

友人とは、こちらもイラストレータ、マンガ家になる前の
「スージー甘金(これも、もちろんペンネーム)」氏であった。

三鷹育ちのスージー氏によると、東京多摩地区の子供たちにとって
多摩テックはパラダイスであり聖地であり、
なかでも、その目玉遊具ゴーカートは、まさしく夢の乗り物であったとのこと、、、。

なかなかに大げさな表現ではあったが、
そんな夢のような楽しさなら、それは是非体験してみなければ(笑)、、、と
我々は多摩テックに出かけていったのであった。

 

 

多摩テックというのは、東京都日野市にある遊園地、
自動車メーカーのホンダがモータースポーツの遊園地として1961年に開業した。

ホンダのエンジンを搭載したゴーカートやバイクのアトラクションで人気を博し、
それこそ昭和の子供たち(特に男の子)の心を、グワシとワシ掴みにしていたらしい。

 

さて、こん時の多摩テックの思い出なのだが、これがいまひとつハッキリと思い出せない。

スージー氏には悪いが、きっと僕にとっては、
そんなに夢のような体験でもなかったのではないか、と思われる。

だが、この「多摩テック」という遊園地のネーミングは、当時の僕の心に強烈に残ったようで
「タマテックタマテックタマテック、、、かっこいいよなタマテック、タマでテックだよタマテック」

当時、テクノポップにいかれていた僕は、
ゴーカートに揺られながら呪文のようにそう呟いていたのだった。

 

 

その後、この仕事を始めた僕のところに、
月刊「宝島」で音楽コラムを連載してみないかという依頼があった。

初めての文筆の仕事を喜んで引き受けた僕は、
そのタイトルをなんてつけたらいいものか、としばらく悩んでいたのだが、、、、
そんな脳裏に、ふとしたきっかけで、この数年前の呪文が蘇った。

「タマテックタマテックタマテック、、、タマでテックだよタマテック、イラでテックだよイラテック」

 

こうして世の中にイラテックという言葉が生まれた。
コラムのタイトルはめでたく「イラテック」と命名されたのだった。

そのまた数年後、今度は会社を設立した時のこと、
このネーミングを気に入っていた僕は、その社名もイラテックにしてしまったというから勢いとは恐ろしい。

今度は株式会社イラテックの誕生である。

 

今でこそ、アイテー系だのベンチャー系だので掃いてすてるほどある○○テックという社名ではあるが、
26年前の当時はそんな名称はほとんどなく
「イラテック?、なんです、それ?」と結構みんなに言われたものだった。

上記の雰囲気を説明するのも面倒なので、ほとんど笑ってごまかしてきたのだが、、、。

 

さて、そんなこんなで数十年、、、

あのときゴーカートに乗りつつ、頭の中にふと浮かんだ言葉がこうして今でも社名として残っていて、
電話に出るときなんかに「はいイラテックでーす」とかいってまだ使われている。

なんだか、ちょっと不思議。

ま、でも、ネーミングの由来なんて意外にこんなもんです、というのが今回のお話。

お粗末。

 

 

、、ところが、この話には少し続きがあって、、、、

先日テレビを見ていたら、多摩テックがなくなってしまうというニュースが流れてきて驚いてしまった。

なんでも今月いっぱいで48年間の歴史に幕を下し、閉園してしまうらしい、、、。

閉園を惜しむ昭和の子供たちが、今度は自分たちの子供たちを連れて訪れ
なかなかのにぎわいを見せているというのがニュースの内容だった。

なんだか、ちょっと、寂しい気がするのは僕だけではないようだ。

さようなら、タマテック、、、君の無き後はイラテックが、きっと守っていくからね、、、
安心しておやすみ、、、、、。
なにを守るんだか、よくわかんないんだけれど、、、。

 

これが宝島1980年8月号に掲載された音楽コラム「イラテック」の第一回目

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