2009-12-14

犬を飼うという事

ドラマ「家なき子」の主題歌になっていた中島みゆきの『空と君のあいだに』は、
主人公すずの愛犬リュウの目線から歌ったものだそうだ。

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空と君との間には今日も冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら
僕は悪にでもなる

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犬の愛情とは真っすぐに飼い主のみに向けられるのだ。
例え、どんな飼い主であってもだ。

 

以前に見たニュースか何かの映像で、衝撃的なものがあった。
お金の無い飼い主が飼い犬の足を自ら切り落とし、
「怪我を負った犬の為に寄付をして下さい」と道行く人達からお金を集めていた。
狂っている。
憤りを通り越して、ただ悲しかった。
しかし、驚いた事にその犬は不自由な足で飼い主の側に寄り添っていた。
飼い主は生活の為とはいえ、その犬と実際に共に過ごし、少しはご飯もあげているだろう。
見たところ、この犬の犬種はダルメシアンで、運動神経も良く決して頭も悪くはない。
いくら足が不自由になってしまったからと言って、果たしてご飯の為だけに一緒に居るのだろうか?
たぶん、その飼い主が人前でだけでも撫でてくれたり、気が向いた時にだけ見せる優しさを信じているからではないだろうか。

 

最近、犬の殺処分の映像もニュースなどでよく見かける。
処分場に連れて来られた犬達は、なぜ飼い主が居ないのか、ここはどこなのか、
何が起こっているのかわからないまま、ガス室に送られるのだ。
徐々に迫ってくる壁。噴き出す二酸化炭素。
恐怖で鳴き、必死で床に爪を立てて踏ん張り、そして倒れていく。
最期まで、飼い主がきっと迎えに来てくれると信じたまま逝くのだ。
見るに堪えない映像だが、その度、目を背けちゃダメなんだと自分に言い聞かせる。
ワタシも「飼い主」の一人なのだ。

 

 

以前、父が亡くなった後、一人になった寂しさからか母の様子がおかしくなっていった。
ワタシを含め、子供達はみな離れて暮らしている為、心配して毎日々何度も電話をかけて様子を伺うが、
状態は日々酷くなっていった。

 

そこで帰郷する時に子犬を一緒に連れて帰る事にした。
イチかバチかの賭けだった。
この時点で母はまだ飼うとは決心出来ていなかったから、
もしダメならこの子は部長の部下、つまり課長として我社の一員にする覚悟の上の行動だった。
連れて帰る前に1号協力の元、必死でトイレトレーニングをして、ハウスにも慣れさせ、
母が子育てであまり苦労しないようにした。

 

以前飼っていた犬を亡くした時の悲しみがとても深かったので、二度と犬は飼わないと言っていた母だが、
ワタシ達が実家にいる間に随分と元気になり、笑顔を見せるようになっていった。
目が小さくて短足で元気が取り柄の愛嬌たっぷりのこの子犬のお陰で生きる気力を取り戻していったのだ。
1号が「モネ」と名付けたその子犬は、現在、お転婆娘として母と共に生きている。
それ以来、電話の話題はモネの事ばかりだ。母もモネも幸せそうだ。
先日、少し体調を崩した母が電話で言った。
「もし、私に万が一の事があったら、この子の事だけが心配。その時は頼むね…。」と。

 
 

一方、我社の部長はゴハンや大好きなオヤツをあげても、ワタシや1号の留守中には見向きもせず決して食べない。
そんな時、「部長のワタシ達への愛は食欲にも勝つのか、、、」と思う。
飼い主が居ない間にゴハンを袋ごと全部食べちゃったとかそういう話をよく聞くが、
部長に限っては一人ぼっちの時には食欲どころではないのだ。
依存心が強く、何よりも離れる事を恐れている。
ただ、側に居ればそれで良いらしい。別にそれ以外は何も求めない。
こんな愛情は、もし人間ならすごいぞ。怖いくらいだ。

 

今も無防備な格好で寝息を立てて、横で眠っている。
彼等がこれからもずっと、幸せでありますようにと願わずにはいられない。

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