2023-09-24
by Yla

蛭子能収「最後の展覧会」

 
青山で開かれている
根本敬 presents 蛭子能収「最後の展覧会」に行ってきた。
 
骨董通りの脇道を入ったところにある現代美術系のギャラリー
AKIO NAGASAWA Galleryで開催中の蛭子さんの展覧会だ。
 
 
蛭子さんと言うと、一般的な印象からすると
太川陽介とバスに乗っているギャンブル好きの
ちょっと変わったおじさんって感じかもしれない。
しかし僕にとっての蛭子さんは、
何と言ってもガロの大先輩である
シュールで不条理な天才マンガ家だ。
 
蛭子さんと同じく「ガロ」でデビューし、
わりとコンスタントにマンガを描いていた80年代のはじめ頃には
ガロをはじめ自販機本やアンダーグラウンドな雑誌で
ご一緒することが多かったこともあり、
イベントやパーティーなどで、ちょくちょくお会いする機会があった。
 
そんな時には、その不思議なキャラクターに驚かされながら
いろいろとお話をさせていただいたものだ。
 
今世紀に入ってからは(古!)あまりお会いする機会もなくなったが
杉作J太郎さんが監督した映画にちょい役で出演させてもらった際
蛭子さんのお嬢さんと共演ということになり
その件でわざわざ電話を頂いたのが、お話した最後だと思う。
 
 
蛭子さんが数年前から認知症を患っていることを
公表されているのはメディアを通じて知っていた。
その蛭子さんが、ペインティングの最新作を公開するというのが、
今回の展覧会だ。
それもタイトルは「最後の展覧会」。
 
旧友のスージー甘金がこの展覧会DMなどのアートディレクションを務め
SNSなどでガンガン告知をしていたこともあり
これはぜひ行かなくては!と出かけていった次第。
 

最新作「だまされた9人」

 
会場には、原色を使ったポップな抽象画が並ぶ。
子供が描いたような絵というのが
たぶん一番近い表現のように思う。
 
並べてあった作品の中で比較的古い2年ほど前の作品は
まだ、いかにも蛭子さんらしい人物が描かれたイラストレーション作品なのだが
最近描かれたという最新作は
「だまされた9人」と題された、ほぼほぼアブストラクト絵画だ。
 

2年ほど前の作品 今回会場でサイン入れを頼んだところ右端の人物も描きだしたらしいが、足が紙からはみ出しちゃってる

 
正直何を描いているのかわからないのだが
(抽象画なので分からなくてもいいんだけど)
それぞれには不思議なタイトルがつけられ、
絵の中にも意味ありげな文字が書いてあったり、
ちゃんとサインが入っているんだけど
そのサインが微妙に間違っていたりと、、、
 
どこまで分かって描いているのか、それともテキトーなのか
その振り幅もなかなか大きくて、謎は深まるばかり。
 
じっと見てるとなんか、
徐々に認知症の度合いを強める
蛭子さんのモヤモヤとした頭のなかを
覗き込んでいる気がしてくる。
 

これも最近の作品。タイトルは「えびぬき」って、、、うーーーん

 
さて、後で分かったのだけど、僕らが着くちょっと前まで
蛭子さんは在廊だったとのこと。
すれ違いだったらしく、お会い出来なくてヒジョーに残念だった。
 
しかし、今回の展覧会の企画者である根本敬さんとは
お会いすることが出来、いろいろとお話を伺った。
80年代ガロを代表する作家である根本さんとは意外にも初対面で、
僕がガロに描かせてもらっていたのが、
79年から81年位までだったので、ちょいニアミスでしたね。
 
お話によると、最初はどれくらいの人が来るか分からなかったが
蓋を開けてみると予想以上の大盛況となったようで
作品の売上も上々とのことでなにより。
 

蛭子作品の前で根本敬さんと

 
カウンターに置いてあった蛭子さんトリビュートのポストカード集は
蛭子さんにゆかりのある漫画家の方々がそれぞれ描き寄せたものらしい。
平口さんやひさうちさんといった、僕にとって懐かしい面々が揃っていて
根本さんにそれぞれの方の近況なども伺う。
 
ちなみに残念ながら、このポストカード
好評につき完売とのこと。
かわりにTシャツを買わせてもらいました。
 
 
そんな感じの展覧会だったが
エビス作品を楽しんだのはもちろん、
ガロ時代の思い出に浸れるひと時も過ごさせてもらい
とても感謝している。
 
「ガロ出身の作家です」というのは
僕の数少ない誇りの一つです。
 
蛭子さん最後と言わず、またやってください。
 
 
Photo by satoko
 
2023年9月7日(木) – 9月30日(土)
 
 
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