椎の木の話
うちの裏の椎の木 まさにこの家のヌシ
30数年住み慣れた東京を離れ、千葉の九十九里浜の南の端っこあたりの小さな町に引っ越した。
小さな町のそのまた南の端っこのなんとものどかな総戸数60所帯くらいの集落。
ちなみにその半数が梨農園を営んでいるという梨の村。
あちこちに点在する梨畑とそれを囲む豊かな田圃、小川、湖、竹林、、、
もお絵に描いたような里山の風景の中で、この春から新しい生活を始めている。
ここに移り住むこととなった事の顛末、 引越大移動に付随するあれやこれやの出来事は、
これからおいおい書いていくとして、、、
とりあえず今回は、挨拶がわりに椎の木のお話。
椎の木、 秋になるとドングリの実をつける皆さんお馴染みの椎の木、
日本の田舎の風景には無くてはならない椎の木。
(と偉そーに書いてるが、ここへ引っ越してくるまでは、
どれがシイやらドングリやら、さっぱり分からぬ不心得者だったワケです僕は。)
玄関を出て家の裏手にぐるりと廻ると、そこは眼下に田圃を見下ろす高台で、
下に傾斜する鬱蒼とした竹林になっている。
幾重にも重なり縦に伸びる竹林と、その隙間から見える青々とした稲穂の絨毯。
この美しい風景は、ちょっと言い過ぎかもしれないが、
さながらかねてよりの憧れの地バリ島はウブドの風景を彷彿とさせるもので、
ここに引っ越してこようと決意させた大きな要因のひとつとなったものである。
で、この竹林の真ん中にどーんと、むちゃくちゃな存在感をもって
天に向かって両手を広げているのが、この椎の木である。
高さ10m余あるこの大木、樹齢何百年くらいであろうか、、、。
詳しい事はいずれちゃんと調べてみるとするが、
いずれにしてもこの地の主のような存在には違いない。
表にまわって我家をあらためて見ると、おおきな椎の木が小さな家を
まるでその懐に大事そうにかかえこんでいるようにも見える。
この地の主であって、きっと我家の守り神に違いない。
じっと見ていると、その木が物静かで優しげな でっかいおじいちゃんに見えてくる、、、。
「えへん、えー、只今ご紹介に預かりましたでっかいジイちゃんです。
ワシがこの世に生をうけたのは、かれこれン百年前、
まだ人間どもが、あたまに茄子みたいなのをのっけて
右往左往しておる時代じゃった、、、、」
そんな椎の木をなかばうっとりと眺めながら、
木の下にウッドデッキを作りたいな、だとか、
あの枝にブランコを吊るすのも良さそうだ、、、とか
いやいやいっその事、ツリーハウスはどうだろうか、、、とか
様々な思いに耽る日々である。
もっとも当の椎の木にとっては、はなはだ迷惑な空想ばかりなのだが、、、。
「やれやれ、今度引っ越してきたやつは、
ロクでもないやつらしいのお、、、とほほ」