2009-11-03
by Yla

「THIS IS IT」

 

11月3日現在、マイケル・ジャクソンのライブリハーサル風景を収録した映画
「THIS IS IT」は大ヒットを記録し、2週間の限定公開期間が4週間に延長された。

 

少しネタバレっぽくなってしまうかもしれないけど、
いや大丈夫、僕がちっとやそっと書いたとしても、
この映画が持つ力や魅力については、千分の一も伝えられないに違いないと思い直し、
昨日この映画を見て感じたことを、いくつか記すことにする。

 

ご存知のとおり、この映画は今年の夏ロンドンで行われるはずだったマイケル最後のコンサート
「THIS IS IT」のリハーサルの様子を収めたものである。

公演数ヶ月前(4月から6月)のリハーサルということで、
マイケルとダンサー、バックミュージシャン、スタッフ達は、
楽曲のアレンジやコンサートの演出、いわゆる段取りをつめているまだ途中で、
当然ながらマイケルも本気で歌ったり、踊ったりはしない(特に映画前半は)。

しかし、それでもスゴイのだ。

リハということで、マイケルはそれらのパフォーマンスを何割くらいの力でやっているのだろうか?

半分くらいだろうか、、、それとも、1、2割くらいで流しているのだろうか?

もし、これがフルのパワーで、歌い、踊ったとしたら、どれくらいスゴイんだろうかと背筋がざわつく。

 

つまり、この映画は、素材集なのだ。

コンサート「THIS IS IT」を完成させるための、まだまだ未完成の素材やパーツが、
この映画には記録されている。

我々はそれらを目撃し、各々の頭の中で、
いまや幻となっていまった、このコンサートの本公演に思いを馳せることになる。

マイケルのパフォーマンスが、楽曲のアレンジが、ミュージシャンの演奏が、
照明、映像、舞台演出、ダンサーの振り付けにいたるまで、
これら全てのパーツが完成し、目の前に繰り広げられたとしたら、どれほどのものになっていただろう!と。

それはきっと信じられないくらい素晴らしい体験になったにちがいない。

そして、その時、もうひとつの事実を知ることになる。

それは決して見ることができないものになってしまった。

我々はなんと、大きなものを失ってしまったんだろう、、と。

 

さて、この映画のもうひとつの最大の魅力は、
リハーサルの合間合間に映し出される「人間マイケル・ジャクソン」の素顔だろう。

このライブにかける彼の情熱、妥協のない姿勢、スタッフに対する心遣い、自問自答、、、
それらの言動のひとつひとつを追っていくごとに、
映画のサブタイトルそのままに、「誰も見たことのない彼に逢える」ことになる。

そこにいるのは、まさしくマイケル・ジャクソンという人間だ。

 

偉大なるポップアイコンという存在ゆえか、
思えば彼ほど誤解され、実像が見えない人もいなかったのではないだろうか、、、。

時を追うごとに加速する容姿の変貌、マスコミを通じて伝えられる奇行の数々、、、等など、
これらがマイケルをどんどん世間の一般常識から大きくはみ出した存在にしていった。

もちろん理解のあるリスナーや熱心なファンにとってはそんな事はなかったのだろうが、
多くの人たちにとってマイケルは、80年代を頂点にしたかつてのポップスターであり、
数多くのゴシップや問題を振りまく、まるでクリーチャーの様な存在ではなかったろうか、、、。

 

正直に言う。

かつては「スリラー」や「バッド」で彼の卓抜した才能に心酔させられた体験のある僕にとっても
2000年代以後のマイケルは「??なんだかなあ、、?」という存在だったのだ。

今年の春、この「THIS IS IT」コンサートの制作発表記者会見の様子をニュースで目にした時も、
「またマイケルが苦し紛れに、なんか変なことをやるらしいなあ、、、」
という程度の浅墓な受け止め方をしてしまっていた。

かねてから自宅ネバーランドの売却話などを含め、
マイケルが経済的苦境に立たされているという噂の渦中にあったせいだ。

 

それらの悪意に満ちた誤解と先入観、、、そのおかげで僕は、
「復活公演とも言える13年ぶりの本格コンサート」「マイケル最後のコンサート」
というこのコンサートの本来の意味を考える事もなかった、、、。

ところが、唐突に訪れた彼の不在によって、その本来の意味を知ることになろうとは、、、
なんという皮肉であろうか、、、。

 

またもし仮に、それらの誤解と先入観のほんの一部が事実であったとしても、
「それが何なの?」「それがどうしたというんだ」と思わされるくらいの
圧倒的な才能であり存在であったと言うことを、この映画は再認識させてくれるのだった。

まったくもって、自身の矮小な偏見と非寛容を悔やむばかりである、、、。

 

でも、そんな我々にもマイケルは、映画の中のスタッフに対してのように
「怒ってなんかいないからね、、、、L、O、V、E、、、」と声をかけてくれるだろうか、、。

きっと、言ってくれそうな気がする。

映画の中のマイケルは、そんなやさしいオーラに包まれている、、、。

 

 

、、、というのが、僕の「THIS IS IT」を見て感じたことです。

 

ちなみに、「スムーズ・クリミナル」も「マン・イン・ザ・ミラー」も
「ビリー・ジーン」も「スリラー」も、、、、どの曲もどの曲も素晴らしいのだけど、
マイケルが心血をそそぎ立ち向かっていた環境問題、地球への思いを凝縮した
「アース・ソング」がもっとも心に残っている。

 

 

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